ロリン・マゼールと山田太一

昨晩、父とわたしが衝突した。母がそれを怒って、「あんたたちが仲良くしなきゃ明日行かない!」といった。明日というのは、サントリーホールでのロリン・マゼール指揮 ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団のコンサートを母が聴きに行く予定のことだ。わたしに「お父さんに謝りなさい」としつこく言うので、それに明日行かないと言うし、しょうがないから父に謝った。母は機嫌がよくなって、明日行ってくると言ったのでほっとした。
明日何時から開演?と母に聞くと、「2時よ」という。「確かめといた方がいいよ」と言っても、すぐには確かめなかった。「マチネはいつも2時なのよ」と。そのままわたしは寝てしまう。今朝、起きたら母が「昨日の寝る前、確かめたら、開演1時だったのよ!急がなくちゃ。」という。わたしは「だから言ったでしょ」と言って、言っといてよかったと内心思った。
渋谷からバスで行くのだが、母が出発を待って乗っていると、山田太一がひとりで乗り込んで来たという。濃紺のスーツを着て小柄だったという。多分同じ所へ行くんだろうなと思っていたら、やはりそうで、同じ停留所で降りたという。でも、いつもと違う場所に止まったらしくて、キョロキョロしてたら、山田太一もキョロキョロしてたという。母がなんかの案内所で聞いて、方角がわかった。時間も迫ってきていて、そこから走った。わたしが、「山田太一にも教えてあげればよかったのに〜」というと、「こっちですよ〜なんて言えないわよ」と母。「2人で走った思い出ができたのに〜ドラマにそのシーンを書いてくれたかもしれないのに〜」とドラマなど見ないわたしがいう。
演奏は、期待した程は素晴らしくなかったらしい。もちろん、中には大興奮してブラボーなどと叫んでいる人たちはいる。どこにでもいる。母は、もっと繊細な微妙な感じを期待していたのだ。音が大きすぎたという。ちなみに曲はベートーヴェン交響曲第4番と7番。でも、ロリン・マゼール山田太一に会えたんだからよかったじゃんっ!と言いたい。